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Sexual Reproductive Health and Rights Initiative

公開勉強会第3回/後編「家庭ですぐにはじめられる性教育サイト『命育』」宮原由紀氏

同日の公開勉強会では、小野氏、高橋氏に続き、家庭で行う性教育のためのサイト「命育(めいいく)」を運営する宮原由紀氏(Siblings合同会社CEO)に、家庭における性教育についてお話を伺いました。後編として掲載いたします。

家庭での性教育をサポートするWEBサイトが登場

家庭でできる性教育サイト

「命育」を利用する保護者に対し「子どもから『性』に関する質問をされたらうまく答える自信はありますか?」というアンケートを行ったところ、アンケートに答えた273人のうち8割以上が「自信があるとは言えない」と回答しました。保護者自身も性教育を受けた経験が乏しく、「どう教えていいか分からない」と悩む人が多いようです。一方で、「子どもはネットで簡単に性的な情報にアクセスできてしまう」と宮原氏は言います。

宮原氏自身も、自分の子どもとの会話で困ったときにネットで性教育に関する情報を探すものの、いい情報が手に入らなかった経験がありました。そんなとき、WEBサービスを提供する企業に約15年間勤務してきた宮原氏と、中学校の保健体育講師をしていた人とが出会います。学校で性教育を行うことの難しさも知ったことから、宮原氏らは幼児期から思春期の子どもを持つ保護者に向けた同サイトを、2019年春に立ち上げました。WEB制作技術を持つママクリエイターを中心とした約20人のチームで作成しています。

家庭の性教育のメリットとして宮原氏は、
1)日常の中でくり返し伝えられること
2)失敗してもやり直しができること
3)子どもの反応を見ながら進められること
3つを挙げます。

「信頼性にも重きを置いているので、性教育やヘルスケアビジネスに精通する医師や専門家など30人が監修についている」(宮原氏)。現在、同サイトでは年齢や性別に応じた性教育記事を配信しています。また、性にまつわる多様な悩みに医師や専門家が回答した記事が約300本掲載されています。米国最大規模の医療サービスNGOであるPlanned Parenthood(全米家族計画連盟)の性教育プログラムの翻訳・コンテンツ利用も始まりました。

さらに宮原氏は、「幼児期、児童期から家庭で性教育が行われていることが大事。されていないと、思春期にトラブルが起こりやすくなってしまう。思春期になってからは、家庭だけでなく、学校・家庭・病院など専門機関と連携した性教育の提供が必要」と言います。

現在、同社では、学校や家庭との連携を促すべく、学童スタッフ向け性教育オンライン研修を開始しました。宮原氏は「子どもとの性の会話の仕方を伝えるところから、学校の先生や家庭の保護者を交えてどう情報共有していくかということについても話していきたい」と言います。また、横須賀市民とPTAを対象とした性教育プロジェクトも始まっています。宮原氏は、「家庭での性教育という形をメインとして情報提供しているが、保護者だけではどうにもならないということもあるので、今後は学校や自治体と連携していきたい」と今後の展開について語りました。

宮原由紀(みやはらゆき)

家庭でできる性教育サイト「命育」代表 / Siblings合同会社 CEO
大学卒業後、大手メディアやインターネット企業を約15年経験し、現職。
子どもへの性教育に課題意識を持つクリエイターたちと、医師専門家協力のもと、命育を立ち上げる。サイト運営のほか、園や学校、PTA、地域などと連携して、多方面から性教育をサポートする活動に取り組む。3児の母。
著書『子どもと性の話、はじめませんか?ーからだ・性・防犯・ネットリテラシーの伝え方』(監修:産婦人科医高橋幸子、出版:CCCメディアハウス)

執筆:増谷彩=omniheal/医療ライター
編集:高木大吾(Design Studio PASTEL Inc.)

投稿:2022年07月04日