京都大学リプロダクティブ・ヘルス&ライツライトユニットでは、UNFPA(国連人口基金)の依頼で世界人口白書2021の翻訳協力を行いました。この翻訳を行う上で、白書の中で強調したい点や日本における性と生殖に関する健康と権利(SRHR)との関係についてコラム形式で連載します。
持続可能な開発目標(SDGs)は人間と地球の平和と繁栄を達成するために、2030年までに地球に住む私達が行うべきことを国連がまとめたものです。5番目の目標としてジェンダー平等の実現、そしてその中のターゲット5.6では特に性と生殖に関する健康と権利(リプロダクティブ・ヘルス&ライツ、SRHR)の獲得が掲げられています。この目標を達成できたか知るための一つとして、女性に質問を行い調査するグローバル指標5.6.1と各国の法整備状況などから政府が提出するグローバル指標5.6.2があります。今回は、それぞれの項目について簡単に見ていきましょう。
SDGグローバル指標5.6.1
さっそくですが、みなさんは次の3つの質問にどのように答えるでしょうか。
①日常生活で、あなた自身のヘルスケアについて意思決定をする人は誰ですか?
②日常生活で、避妊を行うかどうか決めるのは誰ですか?
③あなたは、性行為をしたくない時に夫やパートナーにノーと言うことができますか?
グローバル指標5.6.1では、この3つの質問すべてに自己決定していると答えた15-49歳の女性の割合を調査しています。実のところ調査した世界の国全体で、たった55%の女性しか自分のからだについて自己決定できていないことが分かっています。特にアフリカの一部では10%以下の国も未だにあります(世界人口白書2021 第2章)。また、残念ながら日本ではこの調査自体が行われておらず実態はよく分かっていません。
また、女性であれば自身が、男性であれば自分のパートナーがこの3つの質問についてどのように答えるか、一度考えてみてください。なにげない日常の選択に埋もれてしまい、見過ごされていることが発見できるかもしれません。
SDGグローバル指標5.6.2
SDGsのターゲット5.6がどれくらい達成されているかを測定するもう一つの方法として、グローバル指標5.6.2が設定されています。この指標は、15歳以上の男女が平等に性と生殖に関するケアや情報、教育が得られるように、国が法律をきちんとだめているかどうかを示すものです。
・妊婦健診や産科救急
・中絶、中絶後のケア
・避妊や緊急避妊。
・学校での包括的性教育。
・HIV検査や治療と生活支援。
・HPVワクチン接種
こういった事柄について、本人のからだの自己決定権を尊重するケアやサービスを受けられるような法律があるかどうか。
そして、その法律の施行を阻むような、矛盾する法律がないかどうか。
グローバル指標5.6.2では、これをを調べて点数化しています(世界人口白書2021 第5章)。
日本ではどうでしょうか。中絶の項目では、既婚者は配偶者の同意がないと中絶できないので、マイナス点がついています。15歳以上の男女にとって、本人が望みさえすれば避妊薬にアクセスできるでしょうか。学校での包括的性教育やHPVワクチン接種を阻んでいる制度はないでしょうか。
グローバル指標は、国際機関が定めるひとつの理想の方向性を示してくれています。
私たちみんなで、私たちのからだの自己決定権をエンパワーする社会を作っていきましょう。
投稿:2021年06月30日