京都大学 学際融合教育研究推進センター

リプロダクティブ・ヘルス&ライツ
ライトユニット

Reproductive Health and Rights Light Unit - SRHR.JP

連載:わたしのからだだから第5回 からだの自己決定権に影響するジェンダーとは?

京都大学リプロダクティブ・ヘルス&ライツライトユニットでは、UNFPA(国連人口基金)の依頼で世界人口白書2021の翻訳協力を行いました。この翻訳を行う上で、白書の中で強調したい点や日本における性と生殖に関する健康と権利(SRHR)との関係についてコラム形式で連載します。

私のからだは私のもの、私のからだで過ごす人生は私のもの。

ジェンダーは、生物学的な性差=セックスと区別して使われます。生物としての違い、妊娠・出産ができるのか(内性器の違い)、ペニスがついているのか(外性器の違い)、をセックスと呼びます。ジェンダーは社会文化的性差と呼ばれ、「男性はこうあるべき」とか「女性だから」と、それぞれの社会や文化がつくる男性像、女性像といった、社会文化的につくられる性差のことをいいます。

ジェンダーがからだの自己決定権に影響するのはなぜ?

ジェンダー不平等な国では一体どんなことが起こっているのでしょうか?女性の身体を、子どもを産む道具として扱うことがされてきました。
極端な例では、女性がある一定の年齢になったら女性器を切除することが、今でもアフリカや中東、アジアの一部の国で行われています。これは女性性器を取り除くことで若い女性の性欲をコントロールするという考え方から慣習的に行われています。他には児童婚と呼ばれる、成人となる18歳になる前に結婚をすることが、世界では約7億5000万人の女性と少女に起きているといわれています。児童婚をする多くの女性や少女は、家庭の経済的な理由や社会の慣習により、十分な教育を受けないまま結婚をさせられ、若いうちに子供を産むことになります。
結婚するか、しないか、子どもを産むか、産まないか、性に関して、女性や少女たちは自分で決められておらず、からだの自己決定権がないことがわかりますよね。

日本はどのくらいジェンダー平等なの?

先ほどのような例を聞くと、海外のことでしょ、と遠い話のように聞こえますが、日本のジェンダー平等がどのくらいかご存知ですか?World Economic Forumが、毎年ジェンダーギャップレポートというのをだしてくれています。これは政治、経済、健康、教育の4軸でどれだけジェンダー平等かを評価し、ランキングしたレポートです。2021年のランキングでは、日本は156か国中120位でした。ここ数年同じような位置をうろうろしています。日本は特に政治と経済のジェンダーギャップが大きいという結果です。
国全体のことを言われても実感がわかないかもしれません。身近なところで、性別役割分担意識というものをみてみましょう。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方のことで、平成28年の調査をみてみると、賛成・どちらかといえば賛成と答えた女性は37%、男性は45%でした。ジェンダー平等ランキングの高いスウェーデンで調査を行うと、賛成・どちらかといえば賛成は男女ともに1割未満です。日本ではまだまだ「男性はこうあるべき」、「女性だから」というのが強いんだなと思いますよね。このように、私たちの意識の中でもいつの間にかジェンダーギャップは発生しているんですね。

ジェンダーをつくりだす家父長制とは

ジェンダーを作り出す要素のひとつに家父長制があります。家父長制とは何かというと、家長権が男性たる家父長に集中している家族の形態のことです。戸籍では筆頭者は男性のことが多いのではないでしょうか。また、結婚したとき名字は男性の名字を使うことが多くないでしょうか。当たり前だと思いがちですが、そんなことはないのです。そしてこの構造によって、「権力が男性優位に分配され、先述の性別役割が固定的に配分される」といわれています。
身近な例をあげてみましょう。
新型コロナウィルス感染症の拡大防止のための特別定額給付金が2020年に10万円ずつ支給されたことは記憶に新しいと思います。この給付の方法が話題になっていましたね。住民票の世帯主に給付されました。世帯主、つまり多くの場合、男性にまとめて渡されました。するとそのお金を妻や子に渡すかどうかは、世帯主にかかってしまうのです。別居中だったら?家庭内暴力のある家庭だったら?実際に受け取れなかった女性からの悲鳴をまとめたサイトもあります。これは、政治の意思決定層に男性が多く(ジェンダーギャップが大きく)、起きたことなのではと思います。

私は自分で決めてる!と思っていても、社会や文化の影響を受けてその選択肢が狭まっていたり、「女性はこうあるべき」「男性だから」という世論にとらわれていることも多くあります。ぜひ一度、ご自身のからだの自己決定権について考えてみてくださいね。

 

執筆:北 奈央子(株式会社ジョコネ。 代表取締役、聖路加国際大学大学院看護学研究科博士後期課程在籍)

投稿:2021年07月10日

投稿:2021年07月10日